カテゴリ:制作プロセス process( 15 )

アクアカフェ 制作プロセス working process

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構造体 skeleton: 2010/6/30〜7/30

 ⇒ 構造体(1):スケールのスタディ study of scale
 ⇒ 構造体(2):基本構造 fundamental structure
 ⇒ 構造体(3):二重竹小舞 double bamboo mesh
 ⇒ 構造体(4):素材と構造〜二つの回帰 two returns
 ⇒ 藤森照信氏講演会「土と建築」 lecture by Dr.Terunobu Fujimori 2010/7/30

内壁 inside of wall: 2010/7/30〜8/4

 ⇒ 内壁の土塗り inside of wall (1):7/30〜8/1
 ⇒ 内壁の土塗り inside of wall (2):8/2〜8/4

外壁 outside of wall: 2010/8/5〜8/12

 ⇒ 外壁の土塗り outside of wall (1):8/5〜8/7
 ⇒ 水のゆくえ:8/8 中村哲氏講演会+8/9 下水道見学会
 ⇒ 外壁の土塗り outside of wall (2):8/10〜8/11
 ⇒ 壁の復旧 recovery of wall:8/12

屋根 roof : 2010/8/13〜8/16

 ⇒ 屋根をつくる roof (1):8/13〜14
 ⇒ 屋根をつくる roof (2):8/15〜8/16

通水としつらえ preparation of opening:8/17

 ⇒ 通水としつらえ preparation of opening :8/17



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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 23:30 | 制作プロセス process

構造体(1):スケールのスタディ study of scale

6月29日の資材搬出のまえに、スケールのあたりをつける。
第一竪坑の平面をモデルにすると決めたが、竹と土で実際にどのくらいのスケールのものができるか、またどのくらいの大きさが現場に適合するか、からだで確認する。
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6月27日(日)、屋根と壁高のスタディ。
場所は、竹を運び込んだ6月半ばから、ほとんど個人アトリエと化した芸大音楽棟裏の野外ステージ。

平面は、第一竪坑の断面320x270cmを1.5倍にした480x405cmに決定。
問題は壁高だ。
2tトラックで運ぶことのできた最長の竹は約6m。それでアーチをつくると、屋根のヴォールトの高さがおおよそ1.4mと出る。
制作スタッフに申し出てくれた一回生の南君と寺本さんに手伝ってもらって柱=壁の高さを検討する。
270cmと300cmでずいぶん迷った。
270cmだと、通常の民家やビルの天井より少し高いが、まだなじんだ感覚がある。
300cmまであげると、通常の建築空間のスケールをはみ出て、ちょっとした威圧感がでてくる。
天井の高さが微妙に変わるだけで、空間の感覚が大きく変化する。
壁高は300cmに決定した。

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6月30日(水)、吉井工務店といっしょに美術館の前庭に防音シート用の足場を組み立てたあと、夜7時に大学の仕事場にもどって、シートに480x405cmの正楕円を描く。
もうすでに辺りは暗い。
シートはUVシート7.2mx9.0m。これを美術館にもっていって前庭の床に敷く。汚れ防止のためだが、同時に実寸大の平面図でもある。
楕円の2つの中心点を割り出し、ロープの両端をテープでそこに固定して、一人で太マジックで楕円を描く。
このところ、竹や土の運搬や加工の作業ばっかりだったので、線を描くと、からだがとても喜んだ。まだ見ぬ建物の床の広さがからだの中いっぱいに広がった。


構造体(2):基本構造 fundamental structure

制作プロセス working process top
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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 23:00 | 制作プロセス process

構造体(2):基本構造 fundamental structure

7月1日(木)午前9時半、柱12本を建てる基礎工事を始める。

「生存のエシックス」展のオープニング・レセプションは、7月8日(金)。それまでにかたちの輪郭だけでも立ち上げておこうと作業に入る。だが、季節は梅雨の真っ最中である。

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竹柱は基礎を打たず(打てず)、石貼りの床面に敷いたシートの上に建てる。
平面は円ではなく楕円。割り竹を胴巻きにして固定するが、太さも厚さもまちまちな柱12本が、楕円上にすんなり建つわけがない。前後左右、ばらばらな方向に傾く柱に苦戦。
予備に持っていった角材を組んで支えにする。
長谷川直人さん(陶磁器専攻教授、土造形の科研メンバー)、「生存のエシックス」展の展示デザインを担当する塩崎デザインのスタッフが手伝ってくれる(後者は午前中のみ)。
この日から最後まで、長谷川さんは時間があれば来て、施工を手伝ってくださった。作業は、ほとんどわれわれ二人で進めたといって過言でない。
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同日、夕方の状態。まだ先が長そうである。
足場にはまだ防音シートをはっていない。

7月2日(金)水中ポンプの汲み上げ実験。午後、柱の補強と、屋根に着手。

7月3日(土)、雨で作業できず。
この日、他のプロジェクトの作品や資材がいっせいに美術館に搬入される。

7月4日(日)、ワイヤーを張って楕円のテンションを保持し、屋根の軸となる竹を渡す。
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屋根のアーチができて、建物のシルエットが見えた。
筋交いを入れて補強しているが、柱はまだばらばらと傾いている。支えもまだはずせない。

7月7日(木)、外壁に竹小舞をつけていく。
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柱の厚みを介して、外側と内側に二重に竹小舞をはり、土を塗ったときの壁厚をかせぐ独自の「二重竹小舞」
竹は、美術館北側の資材置き場から運んで、現場で切って割る。
美術館の床の目地が格子状で、竹を3mに切りそろえるのにたいへん効果的だ。
芸大音楽棟裏のステージもそうだったが、規格材を使った建物の床は、方眼紙のように役に立つ。
目地だらけの都市の人工空間はそのままアトリエになりうる。
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ワイヤーを張ってようやく支えなしで全体のかたちがキープできるようになった。
7月8日(金)のレセプションになんとかまにあわせるべく、入口側の壁の外側半分にだけ竹木舞をまわした。
入口は小さいが、筋交いを入れた構造上、強度を保つにはこれしかない。
理由を聞かれたら、「にじり口」だといえばよい。
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防音シートも張り巡らした。(美術館の階段からの眺め)

7月8日(金)、午後5時、「trouble in paradise / 生存のエシックス」展レセプション。

美術館3階会場のプロジェクトは、基本的にハード面がすべてできあがっている。
前庭と一階を担当する中ハシ+井上の「水のゆくえ」プロジェクトは、現場でのwork-in-progressなので、まだかたちをなしていない。
アクアカフェは「何やら竹でつくっている」というレベル。土も水も、メイン素材はまだ見えない。
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出品作家のスティーブ・カーツ(Critical Art Ensemble)が、美術館のまえで無料でビールとタバコを配るパフォーマンスを行う。
「介入の芸術 Art of intervention」。
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中ハシ克シゲさんが、自転車をポンプ代わりにこいで水を浄化する「シクロクリーン」のデモンストレーションを行う。
この自転車搭載型災害用浄水器は、中ハシさんがインターネットで探し出してきた「日本ベーシック」という会社の製品。水というライフラインから「生存のエシックス」にアプローチする「水のゆくえ」プロジェクトにふさわしい、と借りてきたものだ(有料)。
安全上、これで浄化した水を来館者にふるまうわけにいかなかったが、のち、アクアカフェ完成後、器を洗う水のために大活躍することになる。


構造体(1):スケールのスタディ study of scale
構造体(3):二重竹木舞 double bamboo mesh

制作プロセス working process top
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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 22:00 | 制作プロセス process

構造体(3):二重竹木舞 double bamboo mesh

7月9日(金)、雨で作業できず。屋外での作業なのに、梅雨と完全にバッティング。
もっとも人間の思い通りに行かない次元と渡り合うことがこのプロジェクトでは大事なのだ。

7月10日(土)、一日じゅう国際シンポジウム『生命・環境・芸術』への参加のため、作業できず。

7月11日(日)、悪天候で作業できず。午後は、出品作家のDavid Dannのワークショップに参加。
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帰宅後、土塀の土塊を砕き、水でこねて竹構造の試作に塗ってみる。
江戸時代の土をはじめて使って、練り具合、厚み、乾燥速度、強度のテスト。
それぞれ申し分なく、ほっとしたが、3、4日して表面にカビが出てきた。
梅雨のせいだが、本番でカビが大量に発生したら、とちょっと不安になる。

のち、このテストピースは、現場で説明用に展示する。
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7月12日(月)、午前中、現場へ。
驚いたことに、前日の強風のため、躯体が数メートル、道路側に動いていた。竹小舞による面が風を受けたためだろう。
防音シートを張った足場がなければ、道路まではみ出ていたと思われる。
美術館職員の人に協力をお願いして、元の位置に戻す。幸い、まだ竹の構造だけなので、男6人でなんとか動かせた。やはり大地にアンカーを打つ建築作品ではないことを実感する。
午後と翌13日(火)は大学院の仕事のため、作業できず。

7月14日(水)、雨で作業できず。
午後、知り合いの左官職人・松下輝孝さん宅(宇治)へ。土練りのアドバイスを受ける。
土練機を貸してもらえることになる。人手不足対策。

7月15日(木)、縄とワイヤーによる補強、楕円の整形、竹カット。第一シャフト案内板デザインチェック。雷雨のため作業中断。

7月16日(金)、ようやく晴れ間が見え出す。
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ワイヤーを張り直し、を取り付ける。二つの中心に柱も立てた。
梁の目的は二つ。楕円のかたちの保持。天井をつくるときの足場。
柱と梁とワイヤーの関係で、楕円がかなり正確に出ているのがわかって安堵する。


7月17日(土)

b0205315_1831986.jpgとりつけた梁がさっそく屋根づくりの足場として役に立つ。

天井のシェル構造は、竹柱上端の切り口に、軸となる割り竹を差し込み、二、三重に重ねてビスで固定する。
差し込む長さを調節することで、アーチの曲率を調整する。
アーチの頂点は、楕円の長軸4.8mに対して、運び込んだ最長の6mの竹を使うことで自然と得られるものをもってよしとした。
竹どうしが交差するポイントをビスと縄で固定していく。

この作業は終始、長谷川直人さんと井上の二人だけで行った。


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内側の竹小舞をすべて取り付ける。しかし仮づけしただけで、しっかりした固定はまだ。
この日は、久しぶりに学生が手伝いに来てくれた(漆工の前田、谷口)。


7月18日(日)・19日(祝)・20日(火)、ようやく梅雨があけ、夏が本格化する。
柱の傾きの修正、竹小舞の取り付けに引き続き取り組む。
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観客に「いつから土を塗るのか」とよく聞かれる。
外壁にも竹木舞をつけたが、まだしっかり固定できていない。とにかく人手が足りないのだ。
このところずっと単独作業。ときどき長谷川直人さんが助っ人に来てくれるだけ。

7月21日(水)、疏水の水を汲み上げ、内部を貫通させた竹に流す実験を行う。
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7月23日(金)、疏水事務所の足立係長の立ち会いのもと、疏水からのポンプアップを始める。
これで遠くの散水栓まで水を汲みに行かなくてよくなる。
P3のアートプロデューサー芹沢高志さんが来訪。

7月24日(土)、竹木舞の作業の続きと窓枠の取り付け作業。
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土落ちをふせぐため、竹小舞にシュロ縄を巻いていく。膨大な作業量。
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窓枠を6個つくり、縄を巻いて壁に取り付けはじめる。
いずれも「つちのいえ」で実験したやり方だ。
屋根もかけるし、電灯はつけないので、6つの均等に配された窓が大事な明かり採りになる。
窓の位置は筋交いの交差部の上。うまく鳥居の中心を窓の中心でとらえることができた。
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美術館の入口横の屋根の下が、われわれの食事と休憩の空間。疏水向かいのコンビニで弁当を調達。美術館がこうしたふるまいを許可してくれるのがありがたい。


構造体(2):基本構造 fundamental structure
構造体(4):素材と構造〜二つの発見 two returns

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 21:00 | 制作プロセス process

構造体(4):素材と構造〜二つの回帰 two returns

b0205315_242623.jpg制作中、素材と構造に関わる興味深い発見が二つあった。

ひとつは竹小舞の失敗から生まれた。

7月25日(日)、朝9時、左官職人の松下輝孝さんがミキサーをわざわざ持ってきてくださった。
一週間貸してくださると言う。
夏の炎天下で、人手の少ないなか、土を手で練るのはしんどいなと思っていたので、おおいに助かる。

さっそく土塀の土塊を掛矢で砕いて、用意していたワラを入れ、土を練る。


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竹小舞に試し塗りしてみたが、竹どうしの間隔がやはり大きすぎた。
能率アップのため、縦竹の数を減らして間隔をあけた。最大5〜6cmとしたが、手伝ってくれる学生によっては10cmくらい空けている。忙しすぎて、全体の進行をうまくコントロールできない。
また、土落ちをふせぐために巻いた黒のシュロ縄から、染料が土にしみ出て、変色させている箇所があった。
黒のシュロ縄は、竹小舞全体に巻いたときの美しさを思って導入したのだが、色落ちが想像以上だった。
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竹小舞の補強に、予定していたワラ縄ではなく、ゴミとして捨てていた竹の端材を使うことにした。
細すぎたり、短すぎたりする割竹を、横方向につないで通すことで、広すぎる小舞の間隔を補う。ワラ縄を巻き締めるより手間がかからず、しかも捨て竹を使うので、作業を通じてゴミを減らせる。
通常の制作過程だと、途中で出る端材や木っ端はゴミ箱行きだが、ここではゴミが新たな素材として制作過程に回帰してくる。これはのちの落ちた土の再利用についてもいえる。
何か従来の一方通行型の創作とはちがう次元に入っていることを実感する。

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もうひとつは、竹によるシェル構造。
楕円形平面をキープするために、ワイヤーでテンションを補強しつつ、柱どうしを竹のアーチでつないでいたのだが、いつのまにかロマネスク教会の屋根のような交差ヴォールト構造になっているのだ。
拾い集めた竹は、厚みやしなり方がバラバラなので、ひたすら強度や構造上のバランスを念頭に作業していた。そうしたら、いつのまにか歴史的建築の構造合理性に遭遇した、というべきだろうか。機能と構造と形態のあいだには、力学上、普遍的な関係がある——頭でわかっていたことが身体的に納得できた瞬間だった。

一方、制作中、原始的な教会のイメージが、何度も飛来した。
また何人かの観客から、「原爆ドームを想起する」とも言われた。
第一竪坑の工事の犠牲者を思ってつくっているから、ある意味で当然かもしれない。

自然と歴史が回帰してくる。


構造体(3):二重竹木舞 double bamboo mesh
内壁 inside of wall: 内壁の土塗り(1) 7/30〜8/1

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 20:00 | 制作プロセス process

藤森照信氏講演会「土と建築」 2010/7/30

7月30日(金)午後6時〜、藤森照信氏講演会「土と建築」
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「生存のエシックス」というテーマから、人が住まう空間やその素材・技術になんらかの言及があることが、展覧会の構成要素としても必要と思われた。アクアカフェで使っている土の建築的意味も、なんらかの方法で示す必要があった。だが、自分は制作に手がいっぱいだった。

藤森先生に講演をお願いしたのは、ある新聞記事で、「自分は最高の建材は木だと思っていたが、アフリカに行って考えが変わった。土だなと思うようになった」と語られていたのを知ったからだ。
焦点を「建材としての土」にしてもらいたいと思い、失礼ながら、藤森先生の建築写真ではなく、自分自身が撮ったジェンネの泥のモスクの裏口、そしてドゴンの穀物倉庫群の画像を使ってチラシをデザインし、先生に送って、暗黙にその意図を伝えた。
はたして伝わるか、心配だったが、さすが勘のいい人で、講演前日にご自身がアフリカに行かれたときのスライドを急きょ組み込んで下さった。

講演には、チラシに使ったジェンネの泥のモスクとドゴンの蔵がそのまま出てきて、もくろみ通りになった。土について自分の言いたいことを言ってもらえてありがたかった。

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また、施工中のアクアカフェの現場に来られ、土に多少砂利が入ったほうがひび割れに強くなること、凍結による崩壊は防ぎにくいことなど、いくつかアドバイスをいただいた。

じつは、この講演までに内壁を全部塗り終えていたかったのだが、悪天候と人手不足が重なって、かなわなかった。


講演記録(ART iT, Lecture@Museumシリーズ)

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 19:00 | 制作プロセス process

内壁の土塗り inside of wall (1) 7/30〜8/1

7月30日(金) 土塗り初日。ようやく土壁の作業に入る。
この日は、夜に藤森照信氏講演会。それまでにどれだけ塗り進められるか。

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ワーク・イン・プログレス中の配置は、美術館入口側にサンプルを提示して、作業内容を明示。
アクアカフェの躯体の右手奥に、土練り作業場(⇒配置図)。
土塗りの作業中も、人はにじり口から自由に中に入れる。ただし汚れる危険と隣り合わせ。
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土壁の土を掛矢で砕く。
別のやり方では、フネに水をはって土くれを浸しておき、自然なくずれを利用する。
砕いたり、崩れたりすることが、再生のためのポジティブな第一歩。
このあたり、絵具作りに似ているか。
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砕いた土に数センチに切ったワラスサをまぜて、ミキサーに入れる。
25日に左官の松下さんからお借りした混練ミキサーがようやく活躍。いつもなら手でやったところだが、炎天下だし、展覧会期は短いし、機械の手を借りるのを自分に許す。
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300年近く前に練られて、ずっと土壁になっていた大枝の土に、大原野のワラを入れ、琵琶湖疏水の水で練る。
土の再生が始まる。
古い土ほど粘るというが、予想をはるかにうわまわる粘り気で、まるでボンドのようだ。
そのため、注意しないとミキサーが止まってしまう。
それをふせぐため、竹ベラをつくって、羽根の回転にうまく合わせて突っ込んで、塊をほぐす。
水は最初にしゃぶしゃぶに入れて、土を順次足していく。
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ミキサーが赤子かウンコのように土を産み落とす。文字通りの土の「再生」。
練った土は一輪車で躯体の内側に運びこむ。
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荒壁塗りは内側から。外から塗ると、内側が乾燥しにくくなる。
コテは使わず、手袋をして手で塗る。コテ板は井上の手づくり。
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二重竹小舞の外側から見た状態。土はじゅうぶんはみ出て竹小舞に食いついている。この中空で乾燥させる。
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藤森先生の講演会準備のため、初日はここまで。慣れてくれば1時間で3平米は塗れる。
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雨がふらないよう祈るばかり。

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7月31日(日) 朝10時から夕方5時まで、国際シンポジウム『宇宙・医療・芸術』。作業は休止。

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8月1日(月) 朝から続けて内壁の土塗り。

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この日は、朝から後藤さんという山科在住の60代の男性の方が土塗りに参加された。彫刻をされているそうで、一週間ほどまえから土塗りをしたいとおっしゃっていた。むろん快諾した。

その後、芸大のOBや学生以外に、通りすがりの左官職人、大工、建築家、外国人観光客から近所の子供たちまで、さまざまな人が作業に飛び入りで参加したが、後藤さんが第1号である。
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内壁の土塗り inside of wall (2):8/2〜8/4

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 18:00 | 制作プロセス process

内壁の土塗り inside of wall (2):8/2〜8/4

8月2日(月)、続けて炎天下で内壁の土塗り。

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作業は、美術館駐車場の資材置き場から土嚢を約16〜18個ずつ車で運ぶ
→土塊を砕く→練る→塗る を延々と繰り返す。
現場に大量の土嚢を積み上げておくスペースはないからだ。

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左官の松下さんにお借りしていたミキサーを返却し、代わりに新しい混練ミキサーを購入。
名古屋トーカイの「ミニ2.5アップダウンミキサー」。同じ0.75KW。ひとまわり小さいが、頼もしい援軍。

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この日は、小清水漸先生が立ち寄られた。
40年前の小清水先生らのが「位相/大地」だったとすれば、僕らのは文字通りの「移送/大地」。
かつての須磨離宮公園に対して、われわれのは岡崎公園の平安神宮の鳥居の下。
「位相/大地」の最後の穴掘りは、土木作業員に重機で手伝ってもらったというが、「移送/大地」に重機の作業員もいない。真摯に手伝ってくれる長谷川直人さんは日焼けして真っ黒である。

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8月3日(火)、続けて内壁の土塗り。

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防音シートをはずす。
先週から、学芸員の人たちに、シートをはずして作業をもっと人に見せるよういわれていたが、人手が足りなかった。これで現場は京都一の観光地を行く人々から丸見えになる。
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炎天下での土塗り。窓まわりを塗る。

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窓は、筋交いとの関係から均等に6つ空けた。
それぞれの窓から、周囲の景観の異なる要素が見える。
窓は、建築の内部と外部をつなぎ、建築空間と場所の内在的関係をつくりだす。
この場所のシンボルである鳥居の中心の紋章が、一つの窓からまっすぐ目撃できることは重要だった。
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松下さんの左官仲間が内部を興味深げに見学。
柱の見えない長くぶ厚い曲面の土壁は、日本の建築には普通見られない。
アクアカフェの実験は、美術、建築、左官の異分野が出会うプラットフォームづくりでもある。
一般の人は、土壁を見て、「なつかしい、私の家も昔はこうだった」とかいうだけだが、プロは構造や工法の特異さに気付いてくれて、いろいろ話が弾む。

京都新聞記者の岩本さんから撮影取材を受ける。8月4日の夕刊第1面に記事が載る(⇒記事)。

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8月4日(水)、内壁を塗り終える。

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今日は学生がたくさん来てくれた。『光・音・脳』プロジェクトのスタッフで、われわれの『水のゆくえ』プロジェクトの映像制作にもたずさわる前田剛志さんも参加。

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16:30、ようやく内壁をすべて塗り終える。
美術館内の"Cafe de 505"のスタッフが差し入れてくださったお茶で乾杯。

制作期間中、Cafe de 505からは、ほぼ毎夕、お茶の差し入れを受けた。
若き女性店長の竹内さんが成安造形大出身で、とても応援してくださった。いつも少人数で取り組んでいるので、ハラハラだったのだろう。


外壁の土塗り outside of wall (1):8/5〜8/7

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 17:00 | 制作プロセス process

外壁の土塗り outside of wall (1):8/5〜8/7

8月5日(木)、外壁の土塗りに着手。飛び入りが多かった。

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防音シート用の足場も撤去する。
ついでに鳥居も・・・
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この日は学生が少なかった代わりに、中ハシ克シゲさんの「連鎖する水声」プロジェクトのボランティアをしている小中さん(上)、中野さん(下)が手伝ってくれた。お二人とも62歳。まだまだ精力旺盛である。
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オランダ人観光客の子供(Kai君)も飛び入り参加。
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ニームから観光で京都に来たというフランス人建築家のPatric氏も土塗りに飛び入り。中野さんが土を投げて渡す。
こういう無国籍な情景こそ、アクアカフェがめざすものでもある。

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8月6日(金)、続・外壁の土塗り

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竹やワラを提供いただいた大原野の大工・大五さん親子が来訪された。
解体業者の吉井工務店の吉井さんもそうだが、ふだん、美術館などに来ないが、社会を支えるものづくりに関わっている人たちはたくさんいる。そういう異分野の人たちが交流し、知識や技術を交換できるプラットフォームとして、アクアカフェが機能したらいいと思う。

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8月7日(金)、続続・外壁の土塗り

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熱心に手伝ってくれる彼女らはまだ芸大デザイン科の一回生。家を買いたいというようなヤツと結婚しないようになればと思う。
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雨が室内に流れ込むのを防ぐため、窓の上にでっぱりをつけて庇がわりにする。眉毛のようなもの。
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撮影:木下愛理



水のゆくえ:8/8 中村哲氏講演会+8/9 下水道見学会
外壁の土塗り outside of wall (2):8/10〜8/11

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 16:00 | 制作プロセス process

水のゆくえ:8/8 中村哲講演会+8/9 下水道見学会

8月8日(日)、この日は午後2時から、中村哲氏講演会「アフガニスタンにおける国際協力/アフガニスタンでの医療活動、用水路建設、難民救済、農業支援の26年」。

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中村哲先生の講演会は、井上がペシャワール会会員で、「水のゆくえプロジェクト」をいっしょに進める中ハシ克シゲさんに紹介し、実現することになった。

講演会終了後、中村先生が建設中のアクアカフェのなかに入ってこられた。工法や土素材について関心を持ってくださり、初めてじかにいろいろお話できた。風貌も朴訥とした話し方も、まさに土のような方だ。

中村先生は今、井上が誰よりも尊敬する「工作者」だ。
彼がアフガニスタンで実践していることは、まさに「生存のエシックス」そのものといえる。彼の命がけの仕事に比べると、われわれのやっていることはなんともちゃちだ。規模だけでなく、生き様、技術と素材、自然と文明、生命と創造活動の関係にかかわる射程の深さにおいても。いや、そもそも第一竪坑を掘削した明治の工人たちと比べると、しょせん展覧会美術の枠の中では何をやっても卑小に感じる。


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8月9日(月)、午前中は続けて外壁塗り。午後2〜4時、下水道工事現場見学会。
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この見学会は、もと疏水事務所長の岡本繁樹さん(現・下水道建設部長)の特別のはからいで実現した。
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今回、見学させてもらうのは、河原町分流幹線のシールド工法による工事現場。
大雨のときなどに地下に水をためて洪水を防ぐための地下水道だ。
河原町五条の入口から入って、河原町通の地下を北上、高辻通地下を西に進む。
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内径1.6mと比較的小さいトンネルなので、身をかがめて進む。
2009年9月にはじめて同じシールド工法の現場に入らせてもらったが、びっしりとはられた鉄のセグメントの曲面壁が圧巻だった。

見学会参加者は、中ハシ+井上の「水のゆくえプロジェクト」チームの計16名。学生から60代の人まで。一般公募はせず、口コミで集まった。

このとき岡本さんから聞いた話で興味深かったのは、水は蛇口からいったん出れば「下水」になるということ。
中ハシ克シゲさんがボランティアといっしょにつくっていたのはシンクだから、そこはまさしく上水と下水の境界ということになる。

制作中のアクアカフェの平面モデルが琵琶湖疏水の第一竪坑。これがなければ、第一トンネルができず、第一トンネルがなければ琵琶湖疏水もできず、疏水がなければ近代京都もない、というもの。
その琵琶湖からの水のゆくえは、具体的には京都市内の下水道を通過して、淀川から海に流れる。
つまり、この見学会は、疏水のフィールドワークで始まった「水のゆくえプロジェクト:連鎖する水声+@KCUA Cafe」をとりあえず締めくくるものとして、コンセプト的には完璧といえる。


outside of wall 外壁の土塗り(2):8/10〜8/11

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by aKCUA-Cafe | 2010-09-05 15:00 | 制作プロセス process


水のゆくえ/アクアカフェ2010ドキュメント


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